−工房の活動−
“う る し 掻 き”の 活 動

■うるし掻きとは

6月後半〜10月頃まで、専用の道具でウルシノキの幹に横傷をつけて、うるし樹液を採取する技術のことです。「日本産うるし」といえば、関係者の皆さんは「たいへん高価で等しく品質の良いもの」と考えていることでしょう。しかし、2人が実際に自分でうるしを掻いて分かったことですが、ただ傷をつければ誰でも同質の良いうるしが採れるわけではありません。木の状態や体質、気候、うるし掻き職人の技術の上手・下手に大きく左右されます。そしてうるし掻きをする人のポリシー次第では、微妙なさじ加減によってさまざまな性格のうるしを得ることができます。
松本和明さんはそうして自分好みの、とても特殊なうるしを自分で採っているのです。

 

■岩手県でのうるし掻き
2000年、岩手県二戸郡浄法寺町
日本うるし掻き技術保存会の研修生としてうるしを掻く。それと同時に個人的な研究用に50本の木を購入、滞在期間中に掻く。

■徳島県でのうるし掻き
2001年、徳島県三好郡山城町にて。
四国唯一のうるし掻き職人、東官平さんの協力で山城町のうるし木を手に入れ、26本の木を掻き、「阿波うるし」を採る。

■香川県でのうるし掻き
2003年、香川県木田郡三木町にて。
約25年前に自分の土地に、徳島から取り寄せた岩手県産の苗を植えたと別所氏の協力でその木を掻く。香川漆器の産地でもある、香川県内の人々に見てもらおうと7月に公開うるし掻き、11月に体験うるし掻きを行う。

■高知県でのうるし掻き
2004年、高知県長岡郡大豊町
新聞・報道番組を通じて、うるし木の情報が寄せられ、土佐うるし木を数本確認する。その中に樹齢約50年の大木を発見。地主さんの理解を得て、その大木をを掻く。

 


■うるし掻きの作業一連

※以下の説明は2人が各地でうるし掻きの産地をまわり、考証したうえ現在行っているスタイルを簡単に説明したものです。用語や作業理論は、各産地と見解が異なる部分があるかと思いますが、それを了承のうえご覧下さい。

「うるしの木」は、いったいどこにあるのでしょう?
多くの人は、里山に自生する真っ赤に紅葉したハゼやヌルデを「うるしの木」と勘違いして、その木から樹液を採るものと思っています。またある人は、山の奥深い深林にひっそりと自生していると思っていたりします。

うるし樹液を採取する“うるし掻き”という仕事は、翌年の採取計画を立てるところからスタートします。そしてうるしの木を植えている地主さんと交渉。掻きたい木を買い取ります。
その後、木や現場をよく検証。より具体的な採取計画を立てます。また、下草刈りや木によっては足場作りをするなどといった作業も事前にすませておきます。

実際に木に傷を付けるのは、7月上旬。そして天候や状況をみながら約1週間に1回ずつ傷をつけます。1、2回目は出た樹液は「まだうるしになっていない状態」なので、出た樹液は採りません。


ーうるし掻きの様子ー
モデル/宮崎佐和子 撮影/松本和明
岩手県二戸郡浄法寺町のうるし畑にて

皮むき
専用の大きな鎌で、傷を付ける箇所の荒皮を削り取ります。これは、幹の表面をなめらかにすることで傷を付けやすく、またにじみ出た樹液を効率良く採るために行います。むきすぎると木が傷むので慎重にします。

傷付け
U字型に曲げた専用の掻きカンナで一気に傷を付けます。そのとき丸刀で彫ったような長い皮くずが落ちます。その後、時期によってはメサシという、カンナ刃の反対側にある鋭角の刃でさらに溝に切り込みを入れます。
一見単純な作業のようですが、質の高いうるし樹液を求めるため、傷の長さ・刃を入れる角度・前回の傷との間隔等、状況によって微妙な加減をしています。

樹液採取
掻きヘラという専用の溝の形に合わせたヘラで、溝に溜まった樹液をすばやく「掻き取り」、タカッポという筒に落とし込みます。このとき切り込んだ溝をなるべく傷めないよう、軽やかにさっとヘラを当てます。忙しいくらいどんどん樹液があふれ出る木や時期もあり、そんな時は「何回も傷に触りたい」という思いにかられがち。でも、なるべくヘラを通す回数は少なく・軽く効率良く行って木に負担をかけない。これが2人のモットーです。

一般の漆芸家は、乾きが早く艶つけに良い「初うるし」と言われる初夏のうるしを重宝がります。従って、うるし掻き職人も需要の高いこの初夏の「初うるし」を多く採るため、6月からうるし掻きが始まるのが一般的。
しかし2人の場合は、水分をあまり含まず中身の充実した盛夏から秋のうるしを主に使いたいので、うるし掻きを始めるのは7月に入ってから。

この盛夏のうるしは「盛りうるし」と呼び、真夏の太陽をさんさんと浴びた1年で最も勢いのある時期の木の樹液。宮崎さんいわく「壮年期の、たくましいが物静かな男性」をイメージするうるしだそうです。そして秋になって採るうるしは「遅うるし」と呼び、これは一般的には盛りよりやや品質が落ちると位置付けられています。しかし、2人はこの秋のうるしにかなり惚れ込んでいるのだとか。

ちなみに秋うるしは、「一見たおやかな感じだけど実は芯の強い女性」のイメージだそうです。


岩手県浄法寺町でうるし掻きをした宮崎さん。
「日本最大のうるしの町だけあって、木をわ
りと平坦な、掻きやすい場所に植えてくれて
いますね。とても仕事をしやすいです!」と
嬉しそう。


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